大きく近代的な葬祭会館の中で
一番小さな部屋
大きな供花も 供物もなく
受付もなければ手伝いの人もいない
僧侶も読経すらない
17〜8人の小さな葬儀だった
けれど
こんなに心があたたまる葬儀は
はじめてだった
5才の孫の手紙を
最愛の妻が 孫の手をとりながら
棺の叔父に向かい
ゆっくりやさしく読んだ
好きだったビールを
榊の葉につけて
みなで代わる代わる
口元へはこんだ
叔父の大切な人
大好きな人だけが
何回も何回も花を棺にいれた
そしてしずかにそっと叔父に別れを告げた
それは叔父の生前の意思だったそうだ
2才の時に父親をなくし
親、姉兄とわかれ
一人里子に出され
人に言われぬ辛い日をすごし
社会へでて地道に勤め
出会い別れ
そして 最後に出会った
人生で一番大切な人たちだけに囲まれて
73年の今生の幕をおろした
何十年も生きてきて
姉弟3人で撮った写真は
母親の33回忌の相談の日と 法事の日
この2回きり
一番はやく親と別れた末弟は
一番はやく両親の待つ天国へ旅立っていった
今頃 70年ぶりに
抱きしめてもらっているのだろうと思うと
勝手にうれしい涙が流れる
続
2011年3月2日
叔父 逝く
あねおとうと