娘の部屋につるし雛が飾ってあった。
数年前に母が習い、2年かけて55個の飾り物をつくり
5連のひもにつけて吊るしたものだ。
雛のつるし飾りは、東伊豆稲取の伝統工芸で
2月から3月にかけて毎年盛大な雛のつるし飾りまつりが開催される。
昔、貧しい漁村の人々が、立派な雛飾りを買ってあげられないかわりに
着物の端切れを使い、ひとつひとつ思いを込めて
縫い上げたのが始まりだそうだ。
はいはい人形、ほおずき、桃の花、七宝てまり、ねずみ、つる、ざぶとんから薬袋などなど、、、
たくさんの飾りもののそれぞれには
健康であるように、食べるもの苦労をしないようになど
母や祖母の切なる願いが込められている。
わたしの母(ずうずうしいかな、孫ができてもなお自分を「ママ」と呼ばせている74歳のばーちゃん)は
ひと月か二月に一度来るか来ないかの孫娘の部屋を
いつも掃除し、 風を通し、ベッドを整えている。
今日のひな祭りは真冬のような雪模様
2月の小春日和の日に登場したこの飾りも
火の気のない娘の部屋で凍えているようだ。
弾いてもらうこともなくなったエレクトーンの上で
スマップファンの娘のために描いた
キムタクさんの似顔絵が変わらず微笑んでいる。
遠い昔、
母は、当時ヒットしていた
クールファイブの「東京砂漠」を聞くたびに
東京へ飛び出して行ってしまった一人娘を思っていたそうだ。
たまに帰ってくれば、当時のヒッピーさながらの
おかしな格好をしてくるわがまま娘を
さぞかし嘆いていたに違いない。。。
(幸いなことに、孫娘はあたりまえに育ち安堵していることだろう)
母の気持ちは
母にならないとわからない。
詫びながら、長寿を祈る。
2009年3月3日
孫想う【雛のつるし飾り】
ママのひな飾り