大叔母が87歳の生涯を全うした。
長男が口へ運ぶ夕食の際に
小さく聞き取れない言葉を発し
一筋の涙がつたったそうだ。
そして明け方静かに息をひきとった。
近隣の町から嫁ぎ
当時の農家の嫁さんがみなそうだったように
田畑で働き家内をきりもりしてきた。
子供の頃に庭で薪を割らせてもらったり
土間のかまどでごはんを炊く湯気や
川でとってきた蟹をすりつぶし
作ってくれた蟹汁が美味しかったこと
家のわきを流れる小川は 清く澄み
黒くてほっそりしたトンボがとんでいたこと
トイレが外の納屋にあってこわかったことや
れんげ畑で暗くなるまで首飾りをつくっていたこと
近くを流れる川の牛ヶ淵と言う所では、
昔、お姫様が身を投げたという伝説があり
そこを通るたびに胸がざわついたこと。。。
今では洒落た住宅が建ち並ぶその周辺の
何十年もまえの「田舎」の風景が蘇った。
大叔母の姉もまた、ごく近所に嫁にきていた。
大叔母が床に付くようになってからも
毎日顔を出しては見舞っていたそうだ。
大叔母が亡くなる3日前
「あたしゃつらい思いをせずにぽっくり逝きたいよ…。」と
日頃言っていた姉は突然倒れ、
そのまま逝ってしまった。
ひと足さきに向こうの世界で
妹が心細くないように待つ姉の思いなのか。
ほぼ同じ顔ぶれの親戚衆が
2つの弔いに右往左往している姿をよそに
おかっぱ頭の幼い姉妹が手をたずさえ
蓮華の咲く田んぼ道を通り抜け
川を渡ってあちらの世界へ旅立つ姿が浮かぶ。
そんなお二人の逝き方を幸せだとおもい
残った者にそう思わせて終わる生き方に
私もそうありたいと願う。
2009年2月13日
逝き方【姉妹】
逝き方