かんなみワクワク狩野川まつり

since 1987

かんなみ猫おどり

 むかし、天保のころの話です。

 あるあたたかな春の夜のことでありました。軽井沢の藤蔵さんは、隣村の田代に行き、夜ふけて家へもどって釆ました。村ざかいのさみしい竹薮のところまで来ると、薮の中からみょうな話し声がきこえて来ました。こんな夜ふけに、だれだろうかと、足をとめてきき耳をたてていると、たしかにいく人かの声がするのでした。

「どうだ、みんな集まったかい」

「いや、まだ上の白が来ていないぜ」

「白のやつ、いつもは早いくせに、今夜にかぎってどうしたずら」と話し合っているのでした。

 そんな時、ガサガサとだれかの歩く音がすると、

「やっと、上の白が来たぜ]という声がききとれました。

「なんだよ、こんなにおそくなって、お前が来ないばっかりに、踊りがはじめられないじゃないか。」

と、親分らしい者の声がしました。そして、

××屋のとら、○○屋の三毛、×のくろ、○屋のぶち、□やの玉」とたしかめるように呼びました。

「みんなそろったようだ、ぼちぼちはじめるか」

というと、ほかの者が、

「白やい、今夜はお前が笛を吹けよ!」いうのでした。すると、

「今夜はおれはだめだ、笛は吹けないよ」

「どうしてだ!」

「おれは今夜夕飯に熱いおじやを食わされ、舌をやけどしてしまったよ。」などやりとりしていました。

しばらくすると、親分らしい者が、

「しかたがない、それでは今夜は踊りはできねえ、お開きにしよう。」というのでした。ほかのものも、しかたなく、

「そうしよう、そうしょう。」と、みなガサガサ音をたてて、どこへともなく行ってしまいました。

このようすを、きき耳をたてて聞いてしまった藤蔵さんは、(おかしなこともあるものだ)とおもいながら歩き出しました。(それにしても、もの好きな人もあったもんじゃ、薮の中で笛を吹いて踊るなど聞いたこともない。それに、白、ぶち、くろ、三毛、玉なんて、みんな猫の名前だ)と、あらためて思いなおしました。

 藤蔵さんは、おそろしくなり、急いで家に帰ると、かみさんにきくのでした。

「猫の白に今夜は何を食わしたな。」

「なんにもなかったもんで、残りのおじやをくれました。」

かみさんの返事に藤蔵さんはびっくりして、村ざかいでの出来ごとを話したのでした。かみさんも(とんだ、化猫を飼ってしまった)と思うのでした。

 こうなっては、なんとかうまく化猫を追いはらう方法はないかと、相談するのでした。あれこれ考えたすえ、かみさんが、

「あんた、いい方法がありますよ。」

「どんな方法だ。」

「それは、あんたが村ざかいで聞いた猫の話が本当なら、白は人間のことばがわかるはずです

あんたが、よく話をすればきっと、話を聞きわけてどこか行くにちがいありませんよ。」

というのでした。藤蔵きんはしかたなく、あしたにでもなったら話してみることにしました。

 あくる日、囲炉裏のわきにうずくまっている白を捕えて、藤蔵さんは話しました。

「白よ、お前はなあ、どうも人間のことばがわかるらしいのでいうのだが、うちでお前を飼っているのは、踊りをおどったり、夜ふけに笛を吹いたりするために、飼っているのではないぞ。もし、お前がそんなことをしているのなら、うちで飼っておくわけにはいかない。どこかへ行ってくれないか。」

すると、その日の夕方から白の姿はどこにも見えなくなりました。

 やっぱり村ざかいでの、猫の出来ごとは本当だったのでした。

                原話 函南町軽井沢 渡辺宗正

 

猫おどりのいわれ

「かんなみ猫おどり」は、静岡県田方郡函南町軽井沢に伝わる「猫踊り」の民話をもとに1988年から始まり今年で22回目を迎えます。現在では、ワクワク狩野川まつりと共催し多くの方々に支えられ、誰でも参加できる楽しい奇祭として、町内外から1万人以上の方が訪れるまでに成長しました。今年も皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

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かんなみ猫おどり

かんなみ猫おどりを

毎年、かしわ家さんが詳しく

レポートしてくださってます。